東京高等裁判所 平成7年(行コ)43号 判決 1995年12月27日
東京都千代田区一番町二三番地二
控訴人(三四号事件原告)
共立酒販株式会社
右代表者代表取締役
古市滝之助
東京都杉並区高円寺南三丁目四二番一四号
控訴人(六二号事件原告)
合名会社杉並酒販
右代表者代表社員
古市滝之助
右両名訴訟代理人弁護士
亀田信男
右訴訟復代理人弁護士
井上励
右控訴人共立酒販株式会社訴訟代理人弁護士
和田元久
東京都葛飾区立石六丁目一番三号
被控訴人(三四号事件被告)
葛飾税務署長 橋本隆男
東京都杉並区成田東四丁目一五番八号
被控訴人(六二号事件被告)
杉並税務署長
上羽忠志
右両名指定代理人
小尾仁
同
渡辺進
同
桑原秀年
同
堀久司
同
髙橋博之
主文
一 本件控訴をいずれも棄却する。
二 控訴費用は、控訴人らの負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人ら
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人葛飾税務署長が控訴人共立酒販株式会社に対し平成四年七月二日付けでした酒類販売業免許申請拒否処分(以下「本件免許拒否処分」という。)を取り消す。
3 被控訴人杉並税務署長が控訴人合名会社杉並酒販に対し平成四年九月一八日付けでした酒類販売場(小売)移転不許可処分(以下「本件移転不許可処分」といい、本件免許拒否処分と合わせて「本件各処分」という。)を取り消す。
4 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人ら
主文と同旨
第二当事者の主張
当事者の主張は、次のとおり訂正、付加又は削除するほかは、原判決の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。
一 原判決二枚目裏一一行目の「同法一〇条」を「同条」と改める。
二 原判決三枚目表二行目の「右署長」を「右税務署長」と、同六行目の「同法一〇条」を「同条」とそれぞれ改める。
三 原判決四枚目表一行目の「二日、」を「二日付けで」と、同三行目の「同局長」を「同国税局長」とそれぞれ改め、同裏二行目の「被告は、」の次に「平成四年九月一八日付けで」を加え、同五行目の「同局長」を「同国税局長」と改める。
四 原判決七枚目表一行目の「審査するには」の次に「、税収確保のためにどのような措置をとるかは、具体的に明らかになっている目的達成のための手段の選択の問題にすぎないから、憲法一三条に規定する人権保障の基本原則に立脚して」を、同二行目の「基準」の次に「(必要最小限度の原則)」を、同七行目の「立法目的は」の次に「、庫出課税等による増税に対する懐柔策と経済の統制化にあり、これを裏返せば」をそれぞれ加え、同九行目の「職業の自由」を「職業選択の自由」と、同裏七行目から同八行目にかけての「約九五パーセント」を「九六パーセントを超える額」とそれぞれ改める。
五 原判決八枚目裏六行目の「租税」を「酒販免許制度のように租税」と改める。
第三証拠
本件記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これをここに引用する。
理由
一 当裁判所も、控訴人らの本件請求はいずれも理由がなくこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正、付加又は削除するほかは、原判決の「第三 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。
1 原判決一〇枚目裏七行目の「一項は、」の次に「何人も公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と規定するが、右規定は、公共の福祉の制約の下に、狭義における」を、同行目の「職業活動の自由」の次に「(以下、狭義における職業選択の自由と職業活動の自由を合わせて「職業の自由」という。)」をそれぞれ加える。
2 原判決一一枚目表八行目の「同法」を「憲法」と、同一〇行目の「総合的な政策判断、専門」を「国民の租税負担を定めるについての国政全般からの総合的な政策判断、課税要件等を定めるについての専門」と、同裏五行目の「ためする」を「ためにする」とそれぞれ改める。
3 原判決一二枚目表二行目末尾の次に「したがって、このような酒税の賦課徴収の仕組みの中においては、酒類販売業者は、納税義務者である酒類製造者と最終的な担税者である消費者の中間に位置して、両者の間の税負担の適正かつ円滑な転嫁を仲介する重要な役割を担っているものということができる。」を加え、同七行目の「円滑な」を「適正かつ円滑な」と改め、同裏八行目の「以後」の次に「国税収入全体が逐年増加する中で」を加える。
4 原判決一三枚目表七行目の「高まり」から同八行目の「進行している。」までを「高まりを見せている。」と、同一〇行目の「既存業者の権益保護という機能が重視されていないか」を「酒販免許制度がその本来の目的に寄与するよりも既存業者の権益保護という結果を招くことに傾いていないか」とそれぞれ改め、同裏三行目の「とはいえ、」の次に「甲一五号証によれば、平成四年度においても」を加え、同五行目から同六行目にかけての「あることからして」を「あることが認められ」と、同九行目の「ビール」を「最も課税移出数量の多いビール」とそれぞれ改める。
5 原判決一四枚目表二行目の「これに加えて」から同四行目末尾までを削り、同五行目の「以上によれば、」の次に「平成四年度においてもなお」を加え、同裏三行目の「不安定により」から同四行目の「不安定を招き、」までを「不安定により酒類販売代金の回収が困難となり、これによって酒類製造者の経営の不安定を招き、その結果」と、同五行目の「ものである」を「ものであり、免許取扱要領は、同号の規定の趣旨を具体化したものである」とそれぞれ改める。
6 原判決一五枚目表六行目の「基準」の次に「(必要最小限度の原則)」を加え、同裏一行目の「原告」から同二行目末尾までを「控訴人らの主張する基準によって酒販免許制度の合憲性を判断するのは、裁判所が立法府の判断に先んじて酒販免許制度の創設、維持の当否を判断するような結果につながり、政策的、専門技術的判断が強く要請される租税法の合憲性の審査としては採用することができない。」と、同四行目の「目的が職業の自由」を「目的は、職業選択の自由」とそれぞれ改め、同七行目の「、仮に」を削り、同八行目の「側面が」を「側面があることは」と改め、同一一行目の次に改行して
「 なお、控訴人らは、甲三二号証を挙示して、酒販免許制度の採用は、庫出課税に反対する酒類製造者に対する懐柔策であると主張するが、乙一〇号証によれば、昭和一三年の酒造税法の改正案について、政府は、酒税の保全を期するため酒類販売業につき免許制度を採用することとした旨の提案趣旨説明をしていることが認められるから、酒販免許制度の採用が控訴人ら主張のような立法目的によるものであったと認めることはできないとともに、甲三二号証によれば、酒類製造者が庫出課税に反対した理由も、酒類の販売代金の回収が不確実なまま庫出課税が採用されることによる不利益を慮ってのものと認められ、したがって、酒類製造者が庫出課税に反対したから酒販免許制度が採用されたというよりも、庫出課税による酒税の賦課徴収の仕組みを十全ならしめるためには、酒販免許制度の採用が必須のものと認められたとみるのが正鵠を得ていると解されるから、控訴人らの右主張は、理由がないといわなければならない。」
を加える。
7 原判決一六枚目表六行目の「あるところ、他に考え得る制度ある」を「あり、ひとしく間接税といっても、それぞれの間接税が課税対象としている商品の内容及び性質並びその製造、流通、販売の態様及びこれらを担う業者の数、規模等には差異があるのであるから、これらの差異に応じてどのような賦課徴収の仕組みを採用するかは、正に立法府の専門的、技術的裁量に委ねられているところであり、各間接税間の右のような差異を無視して、他の間接税において異なる賦課徴収の仕組みが採られている」と、同七行目「自体が」を「が他の間接税の賦課徴収の仕組みと整合性を欠いていて、」とそれぞれ改める。
8 原判決一七枚目表四行目の次に改行して
「6 さらに、控訴人らは、更正取引委員会「政府規制等と競争政策に関する研究会」の報告に基づき、酒販免許制度における需給調整要件を正当化することができないことが行政内部からも指摘されたと主張する。乙一五号証によれば、公正取引委員会の「政府規制等と競争政策に関する研究会」は、平成元年一〇月、「競争政策の観点からの政府規制の見直し」と題する報告書を提出し、その中で、控訴人らが主張するような酒販免許制度における需給調整要件の問題点を指摘していることが認められる。しかしながら、同号証によれば、同報告書は、右問題点の指摘に引き続いて、結論としては、将来的には酒販免許制度における需給調整要件は自由化する方向で見直すべきであるが、当面は、参入規制の緩和に向けて運用改善を進めるべきであるとしていることが認められるのであって、酒販免許制度における需給調整要件が現時点において直ちに不当なものであるとまで断定したものでないことは明らかであるから、控訴人らの右主張は、採用することができない。」
を加え、同五行目の「6」「7」を改める。
二 よって、当裁判所の右判断と同旨の原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石井健吾 裁判官 吉戒修一 裁判官 大工強)